サンディエゴで1915-16年に開催されたパナマ・カリフォルニア博覧会の跡地であるバルボア公園には、日本国外唯一の民藝美術館、ミンゲイインターナショナルがあります。創設者はマーサ・ロンガネッカー。1952年にアメリカ各地で柳宗悦、濱田庄司、そしてバーナード・リーチがおこなった民藝についてのセミナーに参加をした、サンディエゴ州立大学の教授で陶芸家でした。

ロサンジェルスでのセミナーに感銘をうけたマーサは、1962年に大学から1年間研究休暇をとって日本に渡ります。滞在中は濱田庄司に指導を、その後は、濱田のところで知り合った島岡達三の窯で1968年に指導を受けたりして、交流を深めていきます。濱田庄司の紹介で知り合った芹沢銈介は、のちにサンディエゴ州立大学で6週間に渡る型絵染のクラスも開催したとのことです。

1978年、マーサは民藝を通じての西と東の交流をさらに促進するために、「ミンゲイインターナショナル」という非営利団体を、ラホヤのユニーバーシティタウンセンターショッピングモールに設立します。ラホヤでの開館式には、芹沢銈介が型絵染の織物の展示を寄贈したそうです。そして、その18年後の1996年、バルボアパークの博覧会の跡地にある大きな歴史的建物がミンゲイインターナショナルに受給され、美術館は現在の場所に移動しました。

以上が、ミンゲイインターナショナルのざっとした歴史です。私は勝手にサンディエゴにこういう美術館があるのもなにかの縁かな、と思っております。ただ、日本の民藝館のイメージとはだいぶん違って、「いや〜これは民藝じゃなかろう」という首を傾げたくなるものも多数ありますが。そのへんは固いこと言わないのがサンディエゴ流。

バルボアパークはお散歩に最適だし、美術館二階のジョージナカシマの家具の展示は見応えあります。先日美術館に行った際には日本の「看板」の展示をやっていて、やはり普通の美術館とはちがう展示が楽しめるのもいいところです。創立者のマーサさんは2013年に93歳でお亡くなりになりましたが、一人のアメリカ人女性の民藝への情熱から生まれた美術館。いつまでもサンディエゴにあってほしいと思います。