「控えめで、実用的で、自然から着想を得る作品を作りたい」というウィスコンシン州、リバーフォルズに住む陶芸家スティーブン・ロルフのうつわは、素朴で実用的。用の美という言葉は使うものの、装飾が多くて使いにくいうつわの多いアメリカで、スティーブンは使いやすく、味わい深いうつわを20年以上作り続けている。

スティーブンのうつわの独特な表面は、ろくろで引いて少し乾かした後、クリーム状の土を表面に重ねることによって生まれる。「柔らかい土を、すこし乾いた土に重ねる作業は、地形が変化するのと似ています、川底が侵食されるように。一点もののうつわの作り手として、使ってくれる人に、手仕事の微妙な感覚を伝えたい。使う人が器を触ったときにはじめて、解ってもらえると思っています」とスティーブンは言う。

ニューヨークのアルフレッド大学で美術修士を取った瞬間から、スティーブンはうつわを作って生活していくことを決めていたという。リバーフォルズの家を買うときには、下にギャラリーと工房を構えて上で家族で生活をするという形態が実現できるよう、市と交渉して許可を取得してから移り住んだ。なんでも誠実にやる人なのだ。

そんなスティーブンのうつわは、大半が地元リバーフォルズの人々と、うつわを通じて知り合った人々によって支えられてきた。家族の食べ方、家電の大きさ、食洗機の使用、食器の保管の仕方など、いろいろと変化の多いアメリカで、なるべく多くの人が手作りのうつわを生活に取り入れられるように作っているというスティーブンの器は、彼同様、とても誠実であたたかいのである。
スティーブン・ロルフ経歴
カンザスシティアートインスティチュートを卒業後、ニューヨーク州立アルフレッド大学で美術修士(陶芸)を取得。ウィスコンシン州リバーフォルズで作陶している。