シカゴに住むサラ・ニシウラのキルトは大胆な抽象画のように美しい。

ブラウン大学でビジュアルアーツを勉強したのち、ペンシルバニア美術アカデミーで美術修士を取得したサラは、画家としてのキャリアを一旦始めたが、のちにキルト作りに転換。その理由は、キルトは手で触れるために作るもので、絵画は見るだけのものだからという。
絵は筆を介して表現をする、でもキルトの場合はすべて手で作って表現ができる。そして手の感触はキルトを見る人、使う人にとって大事な要素であるとサラはいう。だからキルトの意味は、絵画よりも深いとサラは思うのだ。

キルトはフラットなことがない。ギャラリーで飾られている時やパソコンの画面では一見そうだが、表面の縫い目がテクスチャを作っている。膝の上に載せたり、たたんだり、よじれたりして動きに沿ってキルトは変わる。だからサラはキルトは絵画よりも体に沿って動く着物に似ていると思うのだという。彼女が主に大正時代の着物のデザインなどにインスピレーションを受けているというのも納得だ。

サラの父方のご家族は日系人で、第二次大戦の際に強制収容所に収監された。大工だった彼女のおじいさんは、木片を集めて、同じく収容された仲間たちのために仏壇を建てた。再利用の生地を集めてキルトを作ることが、なにもない収容所で人々のために美しいものを作り上げた自分の先祖の伝統を繋いでいると彼女は感じている。