アメリカ北東部ニューハンプシャー州のフランクリンで30年以上、木でバスケットを作っているアリス・オグデンが作るバスケットはきっちり目がそろっていて、まさに彼女の勤勉さや几帳面さが現れている。

アリスのバスケットは彼女の工房の周辺、北アメリカ東部に分布している「ブラックアッシュ」というモクセイ科、トネリコ属の木を使って作られる。皮を剥 がした木部を繰り返し叩くことで年輪を分離させ、へぎ板を取り、細く割ってから手で編みだされるこのバスケットは、とても丈夫で、月日が経つほどつやが出て美しくなる。

左が古つやを帯びたもの

ホワイトハウスのクリスマスツリーに飾られたこともある
バスケットの材料になるブラックアッシュと、枠やハンドルの部分になるオークは、夫で木こりのブラッドさんが近くの森から切り出してくるもの。切り倒した一 本の木がバスケットになるまで、すべてを手作業で行うことがアリスのこだわり。バスケットの枠もハンドルもひとつずつオーク材から彫りだして作る。



黙々とバスケットを作る母を助けるのは、アリスの子供たち。雨が降りはじめると道具や材料を乾いたところに移動させ、工房の掃除やかたづけを手伝う姿には胸を打つ。家族の協力があって完成するアリス・オグデンのバスケット。その美しいバスケットはアメリカスミソニアン美術館にも数点収蔵されているほど評価が高い。一つ一つがアリスの徹底したこだわり、そして家族の絆が凝縮されている作品なのだから。